■書評■ 仕事の成果が激変する 知的生産ワークアウト | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

■書評■ 仕事の成果が激変する 知的生産ワークアウト


仕事術や読書術、整理術、ハックシリーズなど、僕らは仕事・アウトプットの質を高めて、成果をあげ、評価されるために様々な書籍を読み漁る。
そうした僕らのニーズを反映して、書店に行けば「仕事術」といったカテゴリーにまとめられて、多くの書籍を見ることができる。

しかし、毎度毎度のことではあるが、特にこの手の書籍は「読む」ことが目的化してしまってはいけなくて、「身につけ実践する」ことで初めて自分の目的が達せられるものなのだということを忘れてはいけない。
僕のような書評ブロガーなどという人種は、「読む」ことが目的になる場合もあるのだけれど…(汗)

本書も、そうした僕らのニーズを満たすジャンルの一冊であるが、そもそも知的生産力とは一体何かということを最初にみておこう。
著者の奥野さんは、本書で知的生産力を支えるスキルとして9つのスキルを挙げている。

知的生産力の体系: Ⅰ 発想からアウトプットをつくる
  1 インプット
  2 発想とアイデア
  3 アウトプット
 Ⅱ 生きた時間をつくる
  4 目標と計画
  5 時間管理
  6 集中
 Ⅲ 創造的な環境をつくる
  7 情報整理
  8 モノ整理
  9 空間の活用

そして、奥野さんは、タイトルにも付けた「知的生産ワークアウト」という言葉に、こんな想いを込めている。

「知的生産ワークアウト」とは: ・情報を仕入れ、整理し、考えるところから、書いたり、話したりといった表現に至るまでのパフォーマンスを高め、その作業をはかどらせるコツや方法
 ・身につけた能力をいつでも100%発揮できるようにするために、時間や環境を上手に使う工夫
 ・日常生活に取り入れて続けることで、知的生産の基礎が身につくトレーニング (p.9)

つまり、これらのスキルを意識して身に付け、高めていくためのトレーニングを行なうことで、知的生産力は磐石の土台を得て、僕らが望むように高いパフォーマンスをもたらしてくれることになる。
それはさながら野球選手が、「打つ・投げる・走る」などのスキルを身に付け、高めていくためのトレーニングを行なうことで、パフォーマンスを上げていく事に似ているわけで、そう考えればそれらをトータルで支える基礎的な体力を鍛え上げることも重要であることに自ずと気付くだろう。

本書で紹介されている「ワークアウト」は、大それた準備や環境などを必要としない。
奥野さんは本書で「ワークアウト」を照会するに当たって、次のような考えをベースにされている。

「大きな差」も「小さな積み重ね」から: 大きなことにチャレンジするだけが、成果を変える方法ではありません。日常的なことに小さな工夫を加え、小さな+αを積み重ねる。このようなアプローチで、結果的に大きな差を生むこともできるのです。(p.12)

特に、最近はサラリーマンをしながら出版をされたりと、以前にも増して、その知的生産力の成果を世に見せている方が増えているけれど、同じようなことを言われていることに気が付く。
僕らに足りないのは、その「小さな工夫、小さな+α」なんだ。
だからこそ、今僕らに必要なことが、本書で紹介されている73ものワークアウトの中にきっとあるはず。

ここでは、僕が本書を読んですぐに始めようと思った、始めたことを幾つか紹介しておきたい。

To Do 03 カバンには常に一冊、「硬い本」を入れておけ

今までも適当に何冊かの本を持ち歩いていたのだけれど、どれも「読みそう」な本ばかりだった。
奥野さんは、そうではなくて、敢えて「硬い本」=「古典や学術書など、なかなかすらすらとは読めない本」を持ち歩き、一日一回、一ページでもいいから開いて目を通してみることが大切だと説く。
そうすることで生まれるものとは一体何なのか?

使える情報源を手に入れろ!: 人に話をするときでも、書いたものを読んでもらうときでも、ウケるためのコツは「その人が知りたいことで、かつその人がまだ触れていない情報を伝えること」です。
 硬い本は、大きな書店で簡単に入手できるわりに、あまり読まれていないので、情報源としてはとても「使える」のです。(p.34)

これは実感として分かる。
仕事でもそうだし、この書評ブログでもそう。
ぽろっと古典から引用してみたりすると、(本当の中身は兎も角として)格式が高そうに見せかけることができるし、広く知られてはいるが実は深く読んだことのある人は少ない古典などの書評は重宝がられるだろう。

本書を読んで、早速「読みそう」な本の一冊をカバンから取り出し、「硬い本」を一冊カバンに入れてみた(勿論、通勤電車の中で開いてみた)のは言うまでもない。
また、たったこれだけのことで、ワークアウトの実践が始められてしまうという、手軽さにも是非注目していただきたいところだ。


To Do 23 新聞一面の600字コラムを毎日書き写せ

新聞を読んでも流し読んでしまうことの多い僕だけれど、確かに毎日の朝刊のコラム(日経新聞なら「春秋」)は、簡潔な文章で「起承転結」がついていて、極めて読みやすいものだと思う。
奥野さんは、主義主張のあまり強くない日本経済新聞の「春秋」を書き写すことによって、文章力を磨き上げるトレーニングにしようと提案している。

僕自身、文章なら書評ブログもそうだし、仕事のメールでも何でも、それなりの分量を書いているはずなのだが、あまり文章力が向上しているという実感を持つことはない(文章を書くこと自体への慣れは感じるが)。
その理由は、きっと、次の奥野さんの指摘が的を得ているだろう。

考えながら書け!: 書くものは、ブログでもメールでも、なんでもかまいません。
 ただし、書いている途中で、
 「どんなノリで書けば気持ちが伝わるだろう?」
 「もっと的確な言い回しはないかな」
 「どんな文章展開にすれば理解してもらえるか」
 と、悩みつつ、「ああでもない、こうでもない」と時間をかけることがなければ、あまり意味がないと思います。(p.104)

この点を反省しつつ、文章力向上の為の基礎トレーニングとして「春秋」の書き写しを始めてみた次第。
効果はもちろん地道に続けることでしか現れてこないだろうが、始めてみて思ったことを少し。

まず、久しぶりにまとまった量を手書きしたなあということ。
文章を書くということに抵抗がなくなるくらいに、毎日書いているつもりだけど、それらは全てパソコン(キーボード)でのこと。
たかが600字程度とはいえ、新鮮な感覚だった(少し手も痛い(笑))。

そして、書き写すことにそれほど集中しているわけではないのだが、字面を眺めて読み流しているだけのときとは、明らかに頭の中の回路が違ってくる。
ちょっと癖になりそうなワークアウトだと思っている。


To Do 27 まずは「商用日本語」を書けることを目標にしよう

僕の文章は恐らく奥野さんのいうところの「商用日本語」にはなっていないと思われ(汗)

読み手を意識した日本語を書け!: ひらがなを多くするのは、商用日本語の基本です。ページが白っぽくなることで、読み手の目にもやさしくなります。その逆をやっているのが、いわゆる「官僚文」というやつですね。(p.122)

そう、ここで指摘されているところの「官僚文」に近いのが僕の文章ではなかろうかと…。
そりゃあ、社会人になって大量に文章を書いて鍛え上げられたのは、名実ともに「官僚文」だったわけだからね…orz

上の「春秋」の書き写しをしていても思ったことだけれど、僕なら感じにするなあと思うところで、平仮名が使われたりしているというのが、「商用日本語」なんだろうなあと。
また、本書で紹介されている大前研一さんが青島幸男さんを評した内容を読んだとき、ああ、僕も大前さんサイドであり、分かりやすいメッセージになるように気をつけなければと思わされた。
先のワークアウトなどと組み合わせながら、意識して取り組んでいかなければいけないところだ。


To Do 62 本棚に「廃棄待ちスペース」を作って定期的に本を捨てろ

このブログで紹介させていただいている本だけでも、一般的なビジネスパーソンに比べれば相当の量の本を読み、所有しているであろうことは想像していただけるだろう。
それに加えて、最近は読んでも紹介していない本も多いので(汗)、実際にはもう少し多くの本を所有している。
ただ、書評ブロガーとしては決して多い方ではないのだが。

そんな書評ブロガー同士で話題になることが多いのが、この大量の本をどうするか、ということ。
捨てるにはなかなか忍びないものがあり、僕なんかは少しずつブックオフに売ったりするのだが、如何せん売るより買うほうが多いので意味がない(笑)
奥野さんは定期的に捨てることで、知的生産力の向上にも資するのだと説く。

「廃棄」で知的生産を差別化しろ!: まず、「廃棄待ち」に移す本を選ぶために、再読することになります。読みっぱなしになっていた本やかつての愛読書を引っ張り出して、パラパラとめくって「あっ、ここ、いいこと書いてあるんだよな」と、改めて本の中身に触れることになります。
 そして、捨てていくうちに、本棚はだんだん「折にふれて読み直す本」「座右に置いておきたい本」だけが残って、自分で編集した音楽のベスト盤のようになってきます。
 さらに、その中から捨てる本を選ぶことで、再読のきっかけにもなり、捨てた結果、「いい本」だけが濃縮されてくる。
 その再読で得たエッセンスが知的生産の土台になるのですね。(p.249)

なるほど、これは早速我が家の本棚にも「廃棄待ちスペース」を作らねば。
きっと妻も喜び一石二鳥というわけだ。


以上、73ものワークアウトの中から、4つだけ紹介させていただいたけれど、どれもこれも、取り組むに当たってのハードルなんてないに等しいということに気付いていただけただろうか?
それでいて知的生産力の向上に結びつくような効果が期待できそうだということも。

これらは僕に特に響いたワークアウト。
きっと、あなたにはあなたに合ったワークアウトがあるはずだ。
是非、本書を手にとり、あなたに合ったワークアウトで知的生産力を高め、さらなる成果をあげていけるようになりましょう!

※本書は、本魂!の仲間であるスマイルシグナルさんにご縁をいただき、著者の奥野宣之さんより献本いただいたものであり、この場を借りて厚く御礼申し上げたい。


■ 関連リンク

著者ブログ: 奥野宣之の実験室

■ 基礎データ

著者: 奥野宣之
出版社: ダイヤモンド社 2010年5月
ページ数: 286頁
紹介文:
アスリートが毎日トレーニングするように、ビジネスパーソンにも自己成長のためのトレーニングが欠かせない時代。
起きてから寝るまでの間、通勤や移動の時間、バスタイム、眠る前などの空き時間を使って手軽にできる「自分だけの工夫」を続ければ、あなたの仕事はきっと変わる!



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