全米で見事完売。
『アイアンマン2』で武器商人ジャスティン・ハマーに「ウォーマシンに入れる武器はどれとどれ?」と聞かれて、ローディが「全部?」って答えるシーンありますけど、「Evo 4G」はまさにあれ。全部載せケータイです。
現時点で最強クラスのAndroidスマートフォン「Evo 4G」は、米スプリントより今月4日発売になりました。
4.3インチ、800 x 480ピクセルのスクリーン、4G WiMAX対応、ワイヤレス接続可。 720pのムービーが撮れる8MPのメインのカメラと、あと動画チャット用にフロントカメラもついてます。1GHzのプロセッサ、HDMI出力、立て掛けて使えるキックスタンドつき...とまあ、まさにナード夢のスペックです。HTCが「ほら、こんなこともできるんだよ!」と、お客様をグイグイ引き寄せるために作ったアイコンですね。気になるお値段は2年縛りで200ドル。
Evoは美麗なスラブ(厚板)です。最大・最速・最強―それが自慢でもあります、今どき珍しく。
今はアップルから生まれたマントラ ―つまり中身なんか関係ない、少なくとも話題にしちゃいけない、エクスペリエンスは魔法のブラックボックスから出てくる、それでいいじゃないか、という風潮が支持を得てますけど、それに対するHTCの回答がこれ。Evoは純粋に中身が勝負です。
大きい!
なんせ対角線が4インチ(10cm)以上もあるので、これは好き嫌いが別れるところですね。パワーおたくのジェイソン記者はこのサイズが堪らないって言ってますし、僕は未来が逆戻りしたような妙な感じ。iPad発売までは「携帯が進化してタブレットと携帯の掛け合わせみたいになって全部それで事足りるようになる」という意識ありましたよね? あの延長線上にあるというか。携帯にキックスタンドが付いてること自体、どれぐらいのサイズか想像つきますでしょ...。
重量もありますよ。アーマードスーツみたいにズシッときます。ウォーマシンのごとく、飽くまで多機能にこだわるとこうなっちゃうんでしょうね...。裏はメタルの削り出しと思ったらゴムっぽい加工でした(こういうところはHTCですねー)。
でも造りはキックスタンドに至るまで、しっかりしてます。1回や3回落としてもビクともしなさそう(トップのフレームの継ぎ目から光が漏れるのは減点だけど)。ただ背面からカメラのレンズが飛び出てるので、1週間でキズがついちゃうかもかもです。
スクリーンは息呑む美しさで、最初オンにすると燦然と輝いて見えますよ。サイズもさることながら、明るくて、色鮮やかで、おまけに視野角もワイド(これはスタンドに立て掛けて動画見るとき非常に重要なポイント)。
Nexus OneやDroid IncredibleやZune HDはもっとファッショナブルなAMOLED(有機EL)ですが、Evoは普通のLCDなので太陽光の中でも使えます。でもまあ、液晶はiPhoneより取り立てて素晴らしくもない、といったところですね。
でもなんといっても4.3インチあるので、気持ちに余裕が生まれるのが良さですね。Twitterフィードもぎゅうぎゅう詰めになってないし、ウェブページもゆったり広く見れるのでパニングやズーミングもそんなセコセコやらなくていいんです。キーボードが大きいとホント、面白いぐらい簡単に打てるものなんですね。動画も必要かつ十分な大きさで、これならキックスタンドがあってもおかしくないです。
しばらく使うと、Evoの画面もそんな大きく感じなくなります。ほかの携帯が小さいだけなのかも。
これでバッテリーが燃料電池なら巨体で全然オッケーなんだけど...なんせ電池はあっという間です。僕は今メインで使ってるのがNexus OneなのでAndroid携帯は丸1日充電抜きで使えるものとばかり思ってたんですが、Evoはそこまで持たない。週末は2pmには充電必要になりました、4Gオフにしてたのに。夜は出掛ける前にオフィスで充電しとかないと、酒2杯目でバッテリー切れ...なんて事態になっちゃいます。
超高速データ通信
ここまで読んで「Evoなんてデカいだけで、他のHTCのAndroid携帯とどこも変わんないじゃん」と思った方は、Evoの真価がわかってない!
Evoは第4世代WiMaxネットワークが使える携帯なんですよ(月額10ドルの追加料金で)。WiMaxはローエンドの家庭のブロードバンド並みの高速無線通信サービスのこと。
しかもEvoはワイヤレス基地局に使えるんです(月額さらに30ドルの追加料金要るけど)。ちょうど家のWi-Fi(無線LAN)みたいに携帯をベースステーションにして、そこから電波飛ばして最大8台で接続を共有できるんですよ。
「データ通信料月額70ドルは高い」と感じるかもしれないけど、スプリントの携帯用WiMaxホットスポット「OverDrive 4G」は月額利用料60ドルですから、それ考えると安いお買い物。
4Gはメチャ速いのがウリで、まあ、使えるのは4Gインフラがある地域に限られちいますけど、ウェブ閲覧はこれまでみなさんが使ってきたどの携帯よりも高速です。 (スプリントにある4G対象都市一覧)。
Wimaxが使えるシカゴ市内でEvoを試してみたら、ページ読み込みは一発! モバイル対応サイトもほぼ瞬時。同じサイトのフルバージョンの読み込みも速いのなんの! 友だちに4G使ってるって言わないと、「ああ、Wi-Fiに繋げてるんだね」って勘違いするぐらい高速です。Fringで1対1で動画チャットしてる時も接続状態は完璧に近かったです(3Gモードだと結果はまちまちでラグでイラつくことも)。
3Gから4Gになって生まれるページ読み取り時間の改善はストップウォッチがなくても実感できるほどですが、念のため測ってみました。棒グラフが短いほど高速という意味ですね(これでOSが爆速高性能のAndroid 2.2だったらもっと速いんだけども) 。
帯域幅ではEvoはDSLに迫る大容量ですが、ケーブルほどではなく、一般に宣伝されてるスピードよりは遅い印象です(少なくとも僕の計測では)。でも今みんなが使ってる携帯の伝送速度に比べたら段違いの速さですよ。以下チャート(棒グラフが長いほど速い)ではEvoの平均下り速度は3Mbps(384KB/s)となってます。
次にホットスポットのテスト。僕がやってみたら、ノートとiPadの計2台しか繋げませんでした。 Evoは8台まで繋げると約束してるんですが、いくらあの手この手でいろんな端末取っ換え引っ換えがんばっても2台繋ぐのが限度でした。でも繋がった2台で体験できたことは...ちょっとした奇跡でしたよ。
まず、両端末でウェブ閲覧。引っかかることもなくスムーズです。今度はiPadで動画サービス「Netflix」にある映画をストリーミングしながら、ノートPCでAIMとTwitterクライアントとGmail/Chatを開いて「Hulu」の動画をHDで再生し、さらにさらにEvoでジェイソンにビデオ電話かけてみました。なんと驚くべきことにこれだけやっても、ほぼ切れ目なく操作できました!(さすがにNetflixの動画は約10分置きに詰まったけど)
というわけで、普通の人はWiMaxの受信強度さえ充分あるなら、EvoのWimaxをそのまま家のメインの接続に使っちゃうなあ、と思った次第です。トーレント漬けの人には薦めないけど、例えば夫婦でウェブ閲覧・動画共有するぐらいならEvoで十分間に合います。
「でも、4G携帯で基地局作ったらバッテリーすぐなくなっちゃう」と思うでしょ? 携帯のバッテリーが丸1日もたないので、僕もせいぜいもって2~3時間だろうなーと思ってたんですが、ななななんとEvoはヘビーユースで4時間もつんです! このヘビーユースっていうのはノンストップの動画ストリームとかAIM、Twitter、上述2端末間でのGmailやChatなんかの話ですけど。もちろん電源に携帯差し込んで使えばフォーエバー(Google I/Oのライブブログはこれでやりました。スプリントの3Gサービスも良好だったけど、差し込む方が確かかと思って)。
ご覧のように、4Gにかなり入れ込んでしまった僕ですが、そんな4Gにもひとつだけ欠点が...あります。
4Gと言うと、アメリカではベライゾンやAT&Tが今度出すLTEネットワークが話題なこともあって4G=700Mhzと思い込んでる人が多いんですが、スプリントの4G網はもっと高い2.5GHzの周波数なんですね。
700Mhzなら今の通話キャリアが電話に使う周波数より低いので、もっと遠くまで飛んで、建物の中までもっと簡単に浸透するんですが、スプリントのは2.5GHzなので、低い周波数スペクトラムより回線容量は優れていても建物の中への浸透度はそこまで良くないんですよ...。
実際使ってテストしてみたところ、部屋の奥に行くと4Gのシグナル、切れてしまいました。エレベーターは当然だめ。
ダウンタウンに、スプリントの3Gの電波はいつも届くんだけど、iPhoneのAT&Tの電波は全然だめな場所があるので、そこでEvo試してみたら、4G回線もAT&Tの3Gと大差なくって、ひどい受信状態でした。自宅アパートの窓際では受信シグナル最高なのに、部屋の奥に入ると表示バーが減るし...。この辺は想像以上に柔軟性ないと思ってください。
従って、「Evo+スプリント4Gネットワーク=従来のブロードバンド接続を用なしにする聖杯か?」と言うと、それほどのインパクトはない。ないんだけれど、でもまあ近いところまでは行ってますね。
撮影は最高
カメラは長所と短所あり。簡易カメラよりイイのは確かです。
800万画素のカメラは、日中日なたで撮ると、みんな「携帯でこんな写真撮れるなんてすごいね」と褒めてくれるような写真が撮れます。しかもササッと素早く焦点合わせられるんですね(これは携帯カメラには欠かせないポイント)。
カメラのインターフェイスは、Android 2.2より前のグーグルのよりは、HTCが独自に用意したインターフェイスの方がナイス。使い方も簡単で、細かいところまで行き届いてます。
問題は暗所だなぁ...デュアルLEDフラッシュは光が強すぎて、被写体のディテールが飛んじゃうんです。バーで使ったらフラッシュが目に痛くて、こりゃ非殺戮用兵器に兼用できるね、って思っちゃうぐらいでしたよ。
720pの動画撮影は昼も夜もダメ。光の加減に関係なく荒くてシミだらけで、ほんとにどうしようもないかも(HD動画のサンプルと写真はFlickrにありますよ。上のギャラリーをクリックしてご覧くださいね)。
で、HDがダメなんだからフロントカメラ(130万画素)の動画はもっとダメだろうと思いきや、これがそんな悪くないんです。Fringでビデオ通話してみたんですが、予想以上に快適でした。
その他もろもろ
Evoを見た後だと、ベライゾンのIncredibleはEvoのミニ版に見えますね。EvoではAndroid 2.1上にHTC独自のSenseというインターフェイスを被せてるわけですが、Evoの画面サイズにはちょっと合わないかな...。グロッシーカーボンとネオングリーンのUIが前よりチープに見えます。アイコンとかも。まあ確かに、Exchangeサポートや無線ホットスポット機能、ソーシャルネットワーク統合など、Senseが先に実践した機能は全部Android 2.2が実現しちゃったので、あっちに目が馴れてしまった面はありますね。
もっと大きな問題は ―これはカスタムのインターフェイスを搭載している全てのAndroid携帯に共通して言えることなのですが― みんなどこまで本気でAndroidプラットフォーム最先端の製品が欲しいのかっていう部分ですね。今はEvoが最新鋭だけど、もう何ヶ月か待てばEvo(そのスピード差はアプリを使うと歴然です)にAndroid 2.2が追いついて、またさらに何ヶ月か待てばAndroid 2.3...。Androidはどんどん次のバージョンが出ますから、そこが良さでもあるんだけれど、スプリントではグーグル公式フォン(Nexus One)買えないので、その辺もよく考えてから買わないと。
価格
Evoは購入後100ドル還金されるので、それを引くと200ドルで、iPhoneとそんなに違いません。メンテが金食いで、下記の基本料プラス、WiMax圏内・圏外に関わりなくデータ通信料月額10ドル払わなきゃならんのですが、パケ使い放題で、テキストメッセージ無制限利用込みなので、AT&Tの同等プランより20ドル安いですね。
個人
月額69.99ドル 450分+Any Mobile
月額89.99ドル 900分+Any Mobile
月額99.99ドル 時間無制限
(Mobile Hotspotは月額30ドル別払い)
月70ドルでデータ無制限、しかもWiMaxでタコ足テザリングが使えるんだから、安いと言えば安い。AT&Tなんてテザリング使うだけで45ドルですもんね...。
う~ん、日本のWiMaxでも使えたらいいんですけどね!
判定
) 携帯でWiMaxが使える!
) 美麗スクリーン!ラグビーのグランドかってぐらい大きい!
) スプリントの3Gネットワーク!
) ステロイドで筋肉補強したとしか思えないスペック!
=) カメラは秀逸。ただし日中の光がある場所に限る
-) カーボンファイバーのブリック潰したみたいな巨体
-) バッテリー寿命がやけに短い
-) Androidのアップデートまで待たされる恐れあり
matt buchanan(原文/satomi)