がんとの向き合い方

投稿者: | 2011-04-20

少し前、テレビで放送されたがんについてのシンポジウムを観ました。

バックボーンの異なる3人のがん専門医が登場し、女性司会者の問いかけに応じて最先端のがん医療を解説する、というスタイル。たった1時間の番組ながら、我々医療の素人にとっては、ためになる情報が盛りだくさん、という感じでした。

現在がんを患っている人やそのご家族であれば、がんについての情報を必死で集めることと思います。ただそうでない人は、さすがに最新情報に付いていくのは大変です。こんな風に「今」をわかりやすく紹介してもらえる機会は、貴重ですね。その意味ではNHK教育の「きょうの健康」なんかも、中高年の人がぜひチェックしておくべき番組かもしれません。

番組で目から鱗が落ちたのは、「分子標的治療薬の登場で、医療者のがんに対する考え方に変化があった」という話でした。従来の抗がん剤治療は、がん細胞を徹底的にやっつける(医学っぽくない表現で、すみません。。。)ことを目指していたのに対し、抗がん剤と分子標的治療薬が併用されるようになったことで、患者の生活の質が保てる程度にがんと共存することを考えるようになった、というのです。

がんを無くさなくても、患者の生活の質(QOLと言います)が保てるならそれでいい、という割り切りですね。あるいは、後者を第一に考えた上で、それを実現するための治療ということを考えるといった感じでしょうか。いずれにしろ、パラダイムシフトと言っていいでしょう。

ただ問題は、我々医療の素人には、なかなかそうした重大な情報が伝わってこないことです。パラダイムシフトを経験した医師と、古い「常識」にとらわれている患者・家族では、コミュニケーションギャップや下手すると相互不信のようなものが起こりかねません。

番組では他に、

  • 痛みの緩和ケアは終末期ではなく、治療の初期段階から導入する
  • 個々の患者に即した栄養療法を施すと、治療の効果が高まる

といった「新常識」が紹介されていました。

一般人は、個々の薬や療法の名前を覚える必要性は、あまりないと思います。それよりも、最先端の治療やケアがどんな考え方や意図の下に行われているか、それをしっかり把握しておくべきなのではないでしょうか。

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