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月経が遅れたといって病院にやってくる患者さんに対して、産科医が真っ先に考えなければいけないのは妊娠です。ただ、最近は診察室に入ってきた途端、「妊娠ではないだろうな」と察することができる方もいます。

　そういう患者さんは色白でスラッとした手足をしていて、生理が止まったことばかり気にしています。血液検査をすると、電解質やホルモンのバランスが崩れていたり、歯の裏側のエナメル質が荒れていたりします。

　いわゆる拒食症です。拒食症は女性に多く見られるので、産婦人科医である僕らも時々お目にかかります。僕らから見ればモデルのようなスレンダーな体形で、既に十分美しい方が多いのですけれども、本人の理想体形はさらにやせた姿で、それに近づけたいと考えています。

　いったん誤ったボディーイメージが形成されると、他人のアドバイスは逆効果になることがあります。周りの何げない一言が彼女たちの治療を遅らせます。

　 例えば「ちゃんとご飯を食べていますか？」とか、「拒食症じゃないんですか？」などの質問は、聞く方は心配して言っていると思います。でも、患者さんに とっては「私は拒食症ではない」という意識を強め、ますます食事を控えたり、食べた後に吐いたりすることにつながりかねません。

　一般の人は医学的知識がなくても外見から判断して直接的な忠告を与えてしまいがちですが、時としてそれが逆効果になるのです。

　拒食症はひどくなれば月経が止まるだけでなく、自分の意思で何かを食べようと思っても体が食事を受け付けなくなり、命を落とす方さえいます。

　例えば、女性アイドルグループの中には足が長くダンスも上手で、若い女の子のあこがれになっている人たちもいます。しかし、もしもあのスタイルになるために過酷なダイエットが必要だとしたら、やっぱり医者としてはお勧めできません。（産科医・ブロガー　田村正明）