テレビにもよく出ている精神科医の香山リカ氏。私とは考え方が違うことが多いのですが、下記2つの記事にはいたく共感しました。
東日本大震災被災地に見る「心のケア」。終末治療に見る「心のケア」。そして「父の死」。
「ご遺体と対面したときの気持ちは?」で精神的な二次被害を生んだ「専門家」調査 ――東日本大震災1年を迎えて見えてきた「教訓」とは
趣旨としては、「心のケア」の押しつけは、かえって本人の立ち直りの妨げになる、ということです。前者から引用します。
脳の機能障害に由来する精神病などの治療が精神科で必要なのは、当然だ。しかしそうではなくメンタル面の「心のケア」は、そもそも「行えばよい」というわけではない。
特に東日本大震災のような大災害を受けての「心の傷」、つまりトラウマに対しては、「ケアしすぎ」は効果がないどころか、むしろ悪影響のほうが強い。そのことが、さまざまな事例や研究で明らかにされつつある。
当事者が「それを望んでいない」場合も、実は多い。
多くの人の心には、トラウマを乗り越えて行く力が、きちんと備わっているのだ。そこに精神医療やカウンセリングが介入することで、むしろその力が阻害されることもある。
「心のケア」押し売りが、正常な回復を遅らせる場合がある。あるいは「心のケア」が新たな問題、病を生み出すこともある。
精神科医としては自己否定になってしまうので言いづらいのだが、私たちはそのことを知っておくべきだ。
話を広げすぎかもしれませんが、医療全般にこのことが当てはまるところは多いのではないでしょうか。人には自己治癒力が備わっていて、「専門家」ができるのは、ぜいぜいその力がスムーズに作用するのを助けたり、力が働くのを阻害しているものを取り除いたりすることに過ぎないのではないかと。
そして何より重要なのは、本人が「治りたい」「治したい」と思わないと始まらないということ。そうした気力も起きないほど落ち込んでいる場合には介入も必要かもしれませんが、気力自体ゼロ、しかも時間が経っても快方に向かう気配すらない、ということは稀なのではないでしょうか。
「心の専門家」の方々には、人の心に関わることについて、畏れのようなものを持っていただきたいと思います。