一貫性を欠くニセ科学批判の主張の一例

Twitterって議論するのに向かないわ。ほんとに。
「合わせ鏡の向こう側」のホメオパシー - Togetter
hosakanorihisaさんは、Mocimasaさんが科学の立場から「科学を装うもの」の間違いをただ指摘しているだけにとどまらない主張をしているという線を明確にするべきだった。たとえば、Mochimasaさんのこういう主張。
http://twitter.com/Mochimasa/status/24740266673

また、仮に科学を偽装していなくても、健康上の効果の有無を判定する唯一の合理的な方法は科学的方法論ですから、依然として科学の立場からの批判には正当性があると考えますがね。

を唱える一方で、漢方については、
http://twitter.com/Mochimasa/status/24823988930

漢方薬のすべてが有効だと証明されているかは知りませんが、十分に検証されているものもあります。漢方薬が科学を偽装しているとは限りません。従って漢方薬をまとめて疑似科学と呼ぶのは適切ではないと思いますが、私の質問にはお答えいただけないのでしょうか。

と、漢方を切り分けてるが、ホメオパシーに求めるのと同程度の基準で漢方薬の有効性がどの程度科学的に明らかになっているか、そこがかなり問題のようだぞという話は繰り返し書いてきたところ。(ちゃんと確認しなきゃならないけれど、そんなになかったはず)


したがって、この点でMochimasaさんの主張は一貫性を欠いていて、対象を恣意的に選択して批判していることがはっきり分かる。よってホメオパシー単独を狙った、、、ま、誤解を恐れずに言えば「魔女狩り」(あまり好きな言葉じゃない)になってしまいかねない主張だということになる。


ニセ科学批判の主導者がこういうダブスタを平気でやるから、だからどうにもならなくなって、無理な詭弁を弄するしか手がなくなる。


で、詭弁による無理な正当化を「科学」とか「合理性」というデコレーションで飾ってやって、このデコレーションで相手を説教しにかかってるだけ。つまり、ニセ科学批判のネット右翼化。

ネット○○派 part61 どちらがより懐疑主義者にふさわしいか

ま、たとえば「内科開業医」先生のスタンスは明解。
内科開業医のお勉強日記


ホメオパシーはダメ。
ホメオパシー自体は無害かもしれないが、その信念に不随する部分は有害 : 内科開業医のお勉強日記
漢方も一律保険適用なんてとんでもない、そりゃ当たり前。
漢方の一律健康保険適応はおかしい・・・という意見まで抹殺される風潮 : 内科開業医のお勉強日記
鍼も今のところプラセボのようだときちんと言う。
鍼を評価する事の難しさ:プラセボ効果を掘り下げたシステマティックレビュー : 内科開業医のお勉強日記


他方で、ニセ科学批判の主導者の菊池誠先生はどうか。
もちろんホメオパシーはダメ。だけど、漢方はよろしい。
kikulog
鍼も日本では歴史があるので研究する意味があるといって、ホメオパシーや波動と対比させる形で肯定。
ネット○○派 part41 理解不能Ⅱ 菊池先生の失言 - 今日の雑談


はい。ではどちらがより懐疑主義者らしいでしょうか。。。「内科開業医」先生のほうが懐疑主義者・擬似科学批判論者としては明解だし、ごく普通です。分かりやすい。


ところが現実は、意味不明のダブスタをやっている菊池誠先生がニセ科学批判の「第一人者」である。おかしい。


なんで菊池先生がこういう手加減をせにゃならんか。答えは、漢方はまだちゃんとしたエビデンスがないからダメだとか、鍼もプラセボの可能性が高いので意味がないだろうとか言ってしまうと、普通の日本人には「過激」に見えてしまうから、でしょ?


事業仕分けの「漢方薬保険外し」ネタでは、ネットでも祭りになったのは記憶に新しい。漢方薬には有効性を示すに十分な科学的根拠がない(ので保険から外せ)と主張することは、ちょっとした勇気を必要とするし、あまりにも受けが悪すぎる。


簡単な話、菊池先生のスタンスならDigにでられるけれど、「内科開業医」先生はでられない。例えて言うならそんな感じ。



現に、漢方はよしとする菊池先生の立場に「安心」する人とか、いるんだよね。本当はそれじゃいけないのに。
kikulog

偽科学糾弾なんで、漢方も?とか思いながら読みました。
結構冷静、かつ好意的に描かれておられるので少し安全。
具体的な未知の薬効(あるいは毒性)なども研究が進むといいですね。

ま、でも、これが、ごくごく普通の日本人の感覚だ。


つまり。一言で言っちゃうと、ニセ科学批判のこういうスタンスは、一般に対する「釣り」としか機能してない。


懐疑主義者で徹底しようとしても日本じゃ無理だってことなんで。しかし本来はこういう「安心」をこそ破らんとするのが懐疑主義者の真面目のはずなんだが。

・・・

ニセ科学批判の問題の一つは、こういう菊池先生の建前と「内科開業医」先生の素直な立場との差にあると思う。懐疑主義でも擬似科学批判でもなんでもないものを、「科学」の立場から批判すると自称して、実際は叩きたいものを叩いているだけだというのが実態で、「科学」云々の論議は中立性を見せかけた「釣り」にしかなっていないという、これが一つの問題。