百醜千拙草

何とかやっています

金と不正とケモノ道

2011-01-25 | Weblog
最近のCellで、各国の生命科学研究資金の状況がレポートされていました。年間、約$40 billionをNIHとNSFを主体に計上するアメリカは生命科学の政府資金としてはダントツ世界最大で、EU全体の2-3倍に当たります。しかし、クリントン時代に倍増したNIH資金はブッシュ時代に増加は最小限に抑えられ、オバマの経済刺激政策の一貫として一時的に資金が投下されたものの、今回の中間選挙で下院の過半数を握った共和党は緊縮財政を明言しており、この生命科学研究資金の増加抑制はしばらく続きそうです。ヨーロッパのスペインやイタリアでは、予算の増加抑制どころか、一割以上の予算のカットが行われたようで、かなり悲惨な状況です。ヨーロッパで比較的よいのはドイツで約11%の予算増加、その他の国々、カナダ、オーストラリアなどは、そもそも資金規模はアメリカの30分の1ぐらいしかないですが、予算は横ばい、年間$4 billionを科学研究費として計上する日本もはかばかしくありません。小国の割には$1.8 billionという予算を組むシンガポール、2000年から科学立国を目指して大量資金を投入してきましたが、政府はその投資回収に乗り出し、今後は予算の30%は産業と組んだ応用目的のものに振り分けるという方針を打ち出し、基礎研究者が逃げ出しているという話はしばらく前に紹介しました。一方、中国、韓国、インドでは20%の予算増という景気。しかし、人口比などで見た場合、総予算はこれらの国々ではまだ少ないので、増加率だけで研究経済環境の評価はできません。驚くのは、ロイター経由のウワサでは、中国は、これから5年で、$1.5 trillionという巨額の金をハイテク科学研究(非生命科学系を含む)にふり当てようとしているという話です。中国からの科学論文の出版数はここ数年、驚くべきスピードで増加してきています。以前の日本の様です。しかも、内容的にもかなりのレベルのものもチラホラ見るようになりました。おそらく、アメリカなどで研究していた中国人が、自国の経済の向上とポジションの増加に伴って、帰国し、中国の科学レベルを押し上げているのではないでしょうか。
 経済低迷下での研究環境は厳しくなる一方ですが、こんな状況で、研究者はどのように生きていけば良いのでしょうか。研究者だけに限りません。景気が悪くなれば、大抵の職でそのしわ寄せを受けます。研究に関して言えば、資金とポジションに関する「競争」はやはり激しくなっていくだろうと思わざるを得ません。限りある資金やポジションですから、誰かが資金を取れば、誰かが取れないのは仕方のないことで、建前上、優秀で実績のある人から資金やポジションが分けられていくことになります。ならば、長期に研究者として生き残るためには、優れた研究を行い、実績を積むことしかないと私は思います。もちろん、コネを頼ったりインチキしたりという方法もありますが、そういうケモノ道を通ると長続きしません。インチキと言えば、残念ながら研究者の研究不正は後を絶ちません。最近のNature Onlineでは、デンマークの若手神経科学者のスキャンダルが紹介されています。この37歳女性教授はデンマーク研究界のスターと持ち上げられてきましたが、大学院生が研究不正を内部告発して、辞職。自身の学位研究論文では、数ヶ月で1700匹のラットを使って実験をしたことになっていて、学位審査委員会が学位申請を却下した(その後、別の委員会を通じて学位取得)という事件もあったようです。この15年で論文数も100本近く量産しているようです。私など自分がメインの論文はこの十年で5本位です。共同研究の人ががんばって下さったので、何とか数はそこそそ出ていますが(どうもありがとうございます)マトモなレベルの論文なら一本に数年かかるのが普通だと思います。また、Duke大学でしばらく前にあった事件がもう一度取り上げられていて、研究不正ででっち上げた論文に基いて計画された臨床治験が、その不正が明らかになって中止になったという事件。とんでもない話です。臨床試験がどのレベルにあったのか知りませんが、もし治療法のない疾患に罹患した患者さんがワラにもすがる気持ちで治験に参加していて、その基礎となるデータが捏造だったので、試験を終了しますと言われたら、どう思うだろうかと想像してしまいました。この捏造研究者、自分さえ良ければよい、そのために世間に迷惑をかけてもバレなければかまわない、という気持ちだったのでしょう。
 ところで、日本の今の首相、まさに、これらの不正研究者と同じ精神構造のようです。しかも、「バレなければ」という部分は既にすっ飛んでしまっていて、不正がバレても、国民からいくら辞めろと言われても、支持率0%になっても、首相の座にしがみつきたい、とガイキチの閾に入っていますから、本当に始末におえません。普通の神経の人なら、バレたら辞めますけどね。この人、まもなく、首相を引きずり降ろされ、次の選挙で落とされてタダの人未満になるでしょうが、もしその時に生きていたら、残りの余生をこの大恥の中でどうやって過ごすつもりなのでしょうか。恥知らずだから平気なのですかね。
 WikiLeaksでのアメリカ-韓国の外交文書がリークされて、去年の二月ごろ、鳩山民主党が対米隷属からの離脱を意図していることにアメリカが危機感を抱いていた、という内容が最近流出しました。振り返れば、そのころから空きカンは副総理にもかかわらず、姿を消し、鳩山批判が降り掛らないように身を細めて、次の首相就任に備えていたようです。鳩山氏が普天間移設で、結局、辺野古に戻って自滅した経緯は不明ですが(私は、辺野古の核兵器庫のことや核密約のことを与党になって初めて知って、辺野古に基地を作ることの意味を知ったこと、加えて、首相在任時にアメリカの意図に背いて暗殺されたとされる小渕首相や橋本龍太郎元首相のこともあって、おそらく相当、アメリカさんに脅されたのではないかと想像しています。ちなみに、脅すのは横田基地のMPにやらせるという話です)、このWikiLeaksの文書は、アメリカが首相の座というアメを持って空きカン一味に接近し、参院選前に鳩山氏を追い込んで、選挙前に辞めるように仕向け、このクーデーターを成功させたという話に整合性を与えるものだと思います。空きカンも実のところは、ヘタにアメリカさんに楯突いたら、(T元首相がやられたとウワサされるように)東京湾にヘリコプターから逆さ吊りにされて殺されると怯えているのかも知れません。辞めたくても辞めさせてもらえないのが実情なのかも知れません。
ともあれ、人間、真っ当に生きなければなりません。 空きカンのこれからを見届けたいと思います。ケモノ道に踏み出した場合の末路を身をもって見せてくれるでしょう。
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