【コラム】「〜を世界で初めて発見しました。」は大した研究ではない

よく研究のプレス発表で締めの言葉として「これこれのことを世界で初めて発見しました。」なんてことが書いてあることがあります。

何も知らない一般の人に「へぇ〜凄い!」と思わせるために使っているのでしょうが、世界で初めて発見したことを最後に強調しないといけないような研究は実は大した研究ではないと言っているも同然なので、一般の人は眉に唾を付けて読んだ方が良いです。

というのは、そもそも研究自体が世界で誰もやっていないことをやる仕事だからです。だから、どんなにインパクトファクターが低い雑誌に載った銅鉄実験(銅でこうだったから、鉄でもこうなったといったものまね実験のことを指します)でも、「これこれのことを世界で初めて発見しました。」で締めることは可能です。つまり、「我々は研究者なので、研究をしています。」みたいなトートロジーなわけです。

世界で初めてやったことが本当にインパクトがある場合は、
みんなが競争して取り組んでいるけど、誰も成功していなかったことに成功した場合か、逆に出来たら凄いんだけど、誰も予想していなかった、できていなかったことに成功した場合です。
前者は数学の定理の証明とかで、後者はiPS細胞みたいな研究です。


よって、そういう場合は大抵タイトルに世界初、世界で初めてが付きます。

タイトルに世界初が付かずに締めが「これこれのことを世界で初めて発見しました。」の場合は、要するに他に強調したいことや強調出来ることがないということも同然です。


逆に言うと、プレスを担当している人は、最後を「これこれのことを世界で初めて発見しました。」にならないように努力するべきです。

あとよくあるのは、「これこれの病気の治療法の開発に役立つことが期待される」というやつです。これも、その病気の人にかなりの期待を持たせる文言ですが、ほとんどの場合、創薬や新しい検査の前々々段階くらいが関の山です。
本当に実用化の目処が立っているなら、そのことも併記されているはずです。
実用化の時期が書かれていないものは、当てにならないととらえた方が無難です。逆に言うと、実用化の目処が立っていなくても、どのように応用すれば、どう役立つのかまでちゃんと説明するのが、責任あるプレス発表と言えます。


研究の発表を見るときはこの2点に注目しておけば、それが本当に凄い発見なのかどうかがわかることが多いです。逆にプレスの人はこの2点に注意して書きましょう。