【コラム】研究者の雑用を激減させて、給与を上げる方法

最近研究者と将来のことを話すと、どうしてもお金の話になります。
研究者は準公務員ですから仕事の専門性、特異性に関係なく、普通の公務員とほぼ同じ給与体系です。
そして、ほとんどの研究者が新しいポストに移転するたびに給与が下がっていっています。経験も知識もスキルも上がっているのに給与はどんどん下がっていく。
まぁ、これはビジネスの世界でも同じでしょうが、バブルの頃の残り香があった頃に海外に留学して給与が下がり、その海外から帰国するとスタッフになるのにアメリカのポスドクより給与が低くなるわけです。


「何とかならないっすかねぇ」と口では言いますが、どうしたらそう出来るかまでは考えが及びません。日本の上の方の研究者の頭がまだ昭和のままだから、我慢していればそのうち徐々に給与も上がっていくと思っているようですが、恐らくそれも厳しい時代になって行くでしょう。
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また、今の国難を受けて、大学では教員の数がどんどん減らされています。
そのくせ雑用だけは今まで通り。そして、給与だけでなく、研究費も減らされていくでしょう。その結果、研究の質はますます落ちていく。すると、アリバイ作りのために書類書きがさらに増えるの悪循環です。



実現可能性はほぼ無いと言ってもよいですが、こういう状況を打破する案を一つ書いておきます。
ゴールを定めることは、それを実現するためにはどうしたらよいかを考える上で非常に重要です。
上記のホリエモンの案も良いのですが、局所的な解になっているので、こちらは全体に適用出来る案となります。



まず、予算申請を無くします。
その代わり、論文のIFだけでばっさり研究費が決まるようにします。IFだけだと、あれなので被引用数、H idex, M indexなどを加えても良いです。

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これだけで、予算申請、または研究報告という国民も世界の科学者も読むことのない下らない書類書きが無くなります。
アメリカと違い、日本の研究規模では、予算申請は実質コネを使って一部のグループにお金が回るようにする仕組みとしてしか働いていませんから、結果だけ評価する実力主義にすれば誰も文句は言えなくなります。



分野によって、論文の出るスピードやIFも変わるでしょうから、そこは国家戦略で適当に分野ごとに係数を変えて評価します。



そうすると、最初にポジションに就いたばかりの人が不利になります。
また、チャンスをつかめなかった人は実力はあるのにいつまで経っても駄目と言うことになりかねません。


そこで、ある程度の研究業務をこなせるinstituteに限り、新しい役職に就くと無条件で500万支給されるようにします。


但し、この500万は通常の研究と違い、いかに短時間で、かつ少ない予算で、高IFを狙えるかの評価として使います。要するに研究のスピードアップを図るためという面もあります。


そのため、評価は雑誌のIF+余った予算額のポイントで次の予算が決まるようにします。余ったお金は国庫に戻されます。


500万全部使って、学会誌以上を狙うも良し、今まで通りIF5以下に複数狙うも良しです。



そして、給与に関してはどうするか。
それは余った予算が給与に上乗せされるようにします。


そうすると、無駄のない、かつ結果が出る研究をしようと頭を働かしますよね。
もちろん、捏造をする可能性も増えます。これに関しては、見つかったら、予算を貰える権利を無くすようにすることで抑えるようにします。


また、給与の上乗せに関しては、余った予算を単に人数で割るだけではラボの人数や研究に関わった人数を、減らそうとする心理が動いてしまいます。立場の弱い人間を著者から外したりとか、直前にクビにしたりとかの不正行為が横行するでしょう。


それを防ぐために共同研究者が多いほど、給与が増える仕組みにしておきます。
例えば、その分野での一定期間で一つのラボからでる平均的な総著者数の1.2倍程度で割った取り分を頂点として、多すぎても少なすぎても取り分が減るように設計しておきます。余ったお金は国庫に戻されますが、その頂点で割り切ると余った予算が全部給与に上乗せされるわけです。



これのメリットは、共著者、共同研究者の数を出来るだけ増やそうというインセンティブが働くことです。日本の臨床の論文みたいにほとんど何もしていないのに名前が入ることもありますが、日本の研究者の欠点である何でも全部一人でしてしまおうとすることを減らして、共同研究でどんどんスピードアップを図り、かつ学際的な仕事になってIFが上がる作用もあります。また、給与が増えますから、できるだけ無駄を減らして、成果重視で取り組む強いインセンティブも働きます。お金のあるラボは身分不相応に付いてしまった予算を消化するために、コンセプトも何もなくとりあえず、機器を買ったり、高価な実験をしてしまいがちですが、それも無くなるでしょう。


と、まぁ、国が制度を変えるとしたらこんな方向性が成長を押し上げるかなとは思いますが、まずしないでしょうね。


あと学生実習とかも、自分たちの実験を進めることをさせたらよいのに、なんで小学生の理科の実験みたいに程度の低いことをやらせるんでしょうね。それをみすかされているから学生も遊び気分でしか実験しないんですよ。アメリカのSummer studentなんてお小遣いを貰いながら、現在進行形の実験を手伝って、論文に名前が載ったりしているわけで、実験のための実験みたいな無駄がありません。