【コラム】いつの間にかポスドク問題は解決していた

震災前から思っていたのですが、いつの間にかポスドク問題が解決していました。


新卒大学生の内定率 過去最低
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110318/k10014755121000.html

震災前ですが、一流企業、終身雇用を保障してくれそうな上位4%くらいの企業はすでに学閥のある慶応早稲田、七帝以上(というか、東大)で、かつ、学生時代に起業していた、学生時代に部活をしており、全国的な活躍をしていた、NPO活動で実績を残していた、学生時代に留学していて英語もしゃべれて何らかの学位を所得していたといったコミュ力と自活力のある学生しか採用しなくなっていました。


今までは、大学院に進まずに、卒後すぐに就職していれば、もっと安心な人生をおくれたのにというのが、ポスドク問題でしたが、コミュ力も自活力もなく、リスク管理もできない、でも、食らいついたことに固執し続けて地道に研究する能力がある人ではどちらにしても就職は困難な時代になっています。


それよりも、むしろ、とにかく自分の好きなことを研究出来ているだけ全然ましだったのではないかという時代です。


ちょっと前は、30代後半、40代、50代のポスドク、あぁ、可哀想でしたが、今となっては、そんな歳になるまで好きなことをやり続けられていたなんてなんて幸せといえる状態です。


さらに、でも、その年代で昔卒後すぐに就職した人はやっぱり安泰じゃんと思うかもしれませんが、最初の20分くらいで十分ですので、これを見ればそうではないことがわかります。大前研一のいうことは信じられないという人でもデータは信じられるでしょう。



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そして、追い打ちをかけるように起こった、地震津波原発事故、計画停電、さらにこれから起こるであろう増税、下手したら、国債暴落、インフレ。
科学研究費の予算も削られるでしょうし、人件費も削られます。すでに公務員の給与5%削減は決まりそうな感じです。計画停電の影響で中小企業はもどんどん倒産するでしょう。大手のリストラ、給与カットも増えると思います。
特に大手で働いていた人は同じだけの収入が得られることを想定して人生設計していますから金額的なダメージは結構大きいです。



また、東北地方の研究設備の立て直しや人の移動、研究試料の移動保管などにある程度優先的にお金が配られて、かつ誰もそれに文句は言えません。すると、削られながらも大御所のところだけは発言力の強さで予算がある程度キープされますから、力の弱いところはさらに干される状態になります。日本の科学研究は半分くらいは死ぬことも覚悟しておいた方が良いでしょう。


それを考えると、今までのなんと幸せだったことかと。



実際のポスドク問題は産業構造の違いが生んだ不幸であるため、実は全体的なシステム設計から考えないといけなかったわけです。例えば、日本の主な研究施設はアメリカの大学を遙かに上回る機器が揃っています。大学院生は給与も貰わず、お金を払って仕事をしています。そういったお金を全部集めて、増やしたポスドクをある程度吸収出来るように次の職も用意しておく必要があったわけですし、増やした大学院の枠の中で人を削っていき、スムーズに退場する仕組みを作っておく必要があったわけです。



本来なら、これらは強いリーダーシップで解決出来ていた問題であり、微力ながらも中央省庁に働きかけることでちょっとずつ修正出来た問題ですが、この震災でもはやそれも不可能になりました。



院に進んでポスドクになろうが、卒後直ぐに就職しようとしようが、いずれにしてもじり貧という意味では、むしろ、ポスドクとして好きなことをしていた分、人生お得だったという時代になったわけです。