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【こんにちは!あかちゃん 第9部】核家族化の裏側で<2>過干渉で摩擦が生まれ

 《1990年代後半、3人世帯が4人世帯を上回った。家族は小さくなり、子どもは2人から1人へ。核家族化と少子化の中で、あかちゃんの誕生は歓迎される半面、小さな家族に摩擦を生むこともある》

 耳を疑った。産後間もなく、義母が手伝いに来たときのこと。「子育てはうちのやり方でね。嫁いできたんだから」。今どき? 私はあなたの所有物?

 鹿児島県内で暮らす主婦の千佳さん(36)は長女(2)の出産後、義母との距離感に戸惑った。付かず離れずでやってきた関係は、孫の誕生で一変する。

 電話で頻繁に様子を尋ねられる。訪ねてきた際は抱いて片時も離さない。「こう抱いたら泣きやむのよ」「私が育てるからね」…。

 だんだん責められている気がしてきた。産後疲れで精神的に不安定だったこともあり、感情が爆発する。「私の子なのよ!」。義母にはしばらく来ないようにしてもらった。

 義姉の時は初孫でもっと干渉されたそうだ。少子化で孫の数も減っている分、思い入れが強くなるのは分からないでもない。それにしても…。

 夫(35)は「せっかく手伝いに来てくれたのに」と義母の肩を持つ。自分のペースをつかもうと育児に必死なのに「出産して性格が変わった」とくさされた。義母との間に入ってくれたら、もっといい関係でいられたかもしれないのに。

 次第に夫とも険悪になった。独身のように振る舞い、ほとんど育児に関わらない。娘はまだトイレの練習をしているのに、失敗したパンツを洗うことも、床を拭くこともない。「とても2人目は考えられない」

 夫の実家には年に1度しか帰省しなくなった。

 《「一姫二太郎」が理想とされた時代もあった。それも子どもの数が多かったからこそ。男女共同参画が叫ばれて久しいが、時にあかちゃんの性別が核家族に摩擦を生む》

 先月のお盆、熊本県内の主婦、沙織さん(29)は夫の実家へ帰省した。臨月間近でおなかが目立つ。居間でくつろいでいると、義母に「性別は? もう分かったでしょ」と問われた。

 「女の子でした」

 「そう。じゃあ次、頑張らないとね」

 内心ショックだったものの「はい」と笑顔で答えられた。覚悟していたことだから。同じようなやりとりを3年前、長女(2)の妊娠中にも交わしていた。

 夫(30)は長男で兄弟がおらず、実家の名字を継ぐ“跡取り”と位置づけられている。少子化の時代、たくさん産むわけではないのだから、まずは男の子を‐。親戚一同の集まりでも同じような会話をよく聞く。

 喜んでもらえるなら、年齢とお金が許す限り、男児を産むまで頑張ろうとも思う。でも正直、重荷だ。

 「わが子はかわいい。親としては性別にこだわりたくないんですが…」

 《実家、特に義理の両親の過干渉は摩擦を生みやすい。ただ、核家族での子育てに限界がある中で、良好な関係を築ければ強い味方にもなってくれる》

 福岡市の知里さん(30)は妊娠5カ月。自営業のため、週2日ほど、近くに住む夫の両親に長女(1)の面倒を見てもらっている。結婚して3年。義父母とはすっかり打ち解けた。

 「この日は預かって」など頼み事は必ず夫(35)にしてもらっている。嫁しゅうとめの間柄では遠慮しがちなことも、夫にとっては実の親だから頼みやすい。

 経済的にも支えてもらっている。出産に必要なものをそろえ、今でも子ども服や食材を差し入れてくれる。子育てにはお金がかかるから助かる。

 うまくいくコツは「細かいことはこだわらない」。義父母が、いつもは控えているジュースやお菓子をあげても「毎日じゃないから大丈夫」と気にしない。そこで譲歩できない母親仲間は少なくない。「子どもを愛してくれる存在なのに、もったいない。ぎくしゃくした関係は子どもが一番感じ取るはず」。2人目ができることに、ためらいは全くなかった。

 「あと3人ぐらい産みたいな」。最近は、そんな気持ちになってきたという。

 =文中仮名


=2013/09/04付 西日本新聞朝刊=

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