本稿は、B Dash Camp 2014 Summer in Fukuokaの取材の一部。
この日から9カ月、ある起業家がスタートアップの現場に帰ってきた。
連続起業家として数多くの事業にトライし、2011年7月にスマートフォン向けの広告配信事業を手がけるノボットをKDDI傘下のmediba子会社化へと導いた小林清剛氏。彼が数年の充電期間を経て、スタートアップの現場に選んだ地は米国だ。
連続起業家の小林清剛氏が代表を務めるChanomaは7月17日、次の新プロジェクトとなるリモートハイヤリングプラットフォーム「Remotus」のα版のお披露目を実施した。Chanomaの創業は2013年12月。
Remotusは近年高騰を続ける米国企業の開発リソースの課題に、米国外のリソースを遠隔で提供、マッチングすることで解決しようとするもの。
開発者を必要とする主にスタートアップ系の企業が、遠隔地や海外でも働くことの可能な開発人員に対してオークション形式で入札をすることができる仕組み。現在テスト的に10社ほどのスタートアップ企業からの人員募集が掲載されている。ちなみにこの掲載社は全て、個人投資家としても活動している小林氏が選んだものだけを掲載しているそうだ。
追記:現時点はα版でオークション機能は秋頃に追加予定とのこと。
この方式はHiredが採用しているものと同様で、採用企業側がオファーを出す際、提示金額(ストック・オプション含め)を明示しているのが特徴。採用される側はそれらを選ぶことになるので、自然とオークションのような状態になる。
また、Hired側が受け取るコミッションフィーも、一括ではなく月額の分割にできる(途中で辞めたらそこで支払はストップ)という仕組みも評価されている。なお、同社は2013年4月に1500万ドルの資金調達に成功した。
ただ、小林氏はこのHiredの仕組みにはまだコミッションフィーを安くする方法があると考えているようだった。具体的にはその部分は「まだ秘密」ということだったが、代わりに開発背景としてこのようなコメントをくれた。
「サンフランシスコに渡り、日々、現地の企業や起業家と会っていく中で、彼らがソフトウェアデベロッパーの採用に苦戦していることと、GoogleやFacebookのようなネット大手の会社が高い給料を人材に支払って彼らをプールしていることを目にし、スタートアップの採用の問題を解決したいと考えました。いくつかのスタートアップがリモートワーキングのスタイルを採用しているのもその理由の1つです。
多くの会社が6ヶ月以上の中長期的採用を希望していますが、実際には成約した案件のほとんどが1ヶ月の契約に終わってしまっているという調査結果を発見し、このギャップを埋める解決方法をRemotusによって提供したいと考えています」(小林氏)。
もちろん、彼の挑戦は今始まったばかりだ。小林氏はこう続ける。
「優秀なスキルがある人って世界中に散らばっているんです。でも彼らの給与の差は大きいまま。さらに、北米で目にしたリモートの採用はOdeskか紹介のみというのが現実です。このリモート&リロケートでの採用は今後ますます発展していくはずだし、世界中から優秀な人材を採用できるプラットフォームを作りたいと思っているんです」(小林氏)。
ここ数年でイグジットを経験した起業家たちはそれぞれ新しいスタートを切っている。小林氏もまたそれに続いてくれるだろう。彼だけが米国でのスタートになる(日本法人は設立準備中)が、それがどのような結果に結びつくか。
引き続き追いかけたいと思う。
※情報開示:小林清剛氏はTHE BRIDGEのアドバイザーでもあります。
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